アバター

石井は警察庁に戻った。
時計は午前3時30分を差していた。

中渕がパソコンと戦っていた。

「おい、中渕、携帯だ!」

中渕を打つ手を止め、立ち上がった。

「携帯ですか。すぐに調査するから、貸してください」

「俺もいっしょに、調査する。作業室に入る」

「主任もですか。私一人の方が、調査しやすいですけど」

「何言っている。俺が持ってきたんだ。着いて来い!」

中渕は、不機嫌そうに渋々、石井の後をついてきた。

作業室で、石井は白い手袋をはめて、由香の携帯電話を慎重にビニール袋から取り出した。

まず携帯電話に付着した指紋の採取をすることにした。これをしないと次の作業にかかれない。
警察庁には鑑識課はない、警視庁か埼玉県警に依頼するしかない。そうすると、結果がでるまで、二日はかかる。

石井は自ら指紋採取キットを引っ張り出し、指紋を採取した。

石井は両開きになっている携帯の蓋をあけた。電源はまだ、二本立っている。電源が切れると、今のデータが消える恐れがある。ネットフォン専用の電源アダプターを携帯に繋ぐ。

「中渕、マンションでメールの着信が入っていたから、まずそれから見るぞ」

「はい」