アバター

中渕に怒りを覚えながら、由香のマンションの駐車場に着いた。
階は１０階の１０１９号室だ。不思議に自殺した者は、高層階に住んでいる。誰かの意思を感じる。

「誰かが、仕組んでいるのか？」

防犯カメラも付いていないエレベーターに乗る。マンションは、築２０年以上は経っている。
石井は、エレベーターの中を捜査官の目でくまなく見る。何も代わりがない。廊下も確認しながら部屋の前につく。
１０１９号室の鍵を開けドアを少し開ける。部屋の中から冷たい冷気が流れてくる。石井はゾクッと寒気を感じた。

石井は意を決して中に入った。

部屋の中は、照明がついている。母親が慌てていた様子が窺える。
石井は細心の注意で、家の中を見て進む。右手には特殊警棒を握っている。拳銃は警察庁に置いてきた。背中からジトーと汗がにじみ出る。すり足で少しづつ内に進む。玄関からリビングに入る。リビングは照明がついて、クーラーも電源が入っている。変わった様子はない。奥に二つの部屋のドアが見える。母親と娘の部屋だ。
石井は、最初のドアをゆっくりと開ける。母親の部屋だ、和室できれいに整理整頓されている。
隣は、由香の部屋だ。石井は警棒を握りなおした。