アバター

目の前に等身大の青白い顔をした田中花子が笑いながら現れる。
どうすることもできない。

アバターが「フフフ…立て、こっちに来い…」ゆっくり手招きする。

由香の体は意思に従わずスーと立ち上がった。

「お母さん。助けてー。私のアバターが…。助けてー」
叫んでも口が固く閉ざされている。

「フフフ…ベランダのサッシを開けろ」

アバターがスーと亡霊の様に移動する。

由香の手がベランダのサッシ戸を開ける。

「嫌だ!嫌だ!ベランダに行きたくない!」

「フフフ…その手すりを乗り越えろ」

「嫌だ!自殺したくない!」

由香は必死で叫び、体を止めようとするが、徐々にベランダの手すりをよじ登っている。
遥か下に駐車場が見える。心が恐怖で凍りつく。

「怖いー!。もう駄目だ。落ちる!」

由香は意識がなくなった。しかし、体はまだ手すりを越えようとしている。