アバター

「あなたは、由香ちゃんの携帯電話に間違ってメールを送ったでしょう。もうそのデータは石井さんが復活させて、ネットフォンのサーバーに転送しましたよ。証拠は確保されました」

磯山は防弾ヘルメットを投げ捨てた。長い髪が揺れる。顔を振りながら右手で前髪を掻き分ける。

石井は驚いた。そんな事はしてない。磯山は何を言っているのだ。何だ？何だ？何だ？………。
そうか！ポーカーゲームを始めたのか。手持ちのカードは関係ない。ハッタリだけで中渕に勝負を挑んでいるんだ。

中渕の眼球だけが石井に動いた。

中渕が、
「主任携帯は殺人の証拠物件として大事に保管してます。乱闘で壊れて、中身は何も入ってないですよ」

「乱闘の衝撃でデータが消えた？あなたが消したんじゃないの？」磯山が突っ込む。

「フッ、私は一切触っていませんよ。鑑識が調べました」

「石井さん。内容見ましたよね？」
磯山が石井に言う。

「えー。それで中渕と確証を得て。この部屋に乗り込んだのです。中渕もう観念しろ！」
石井は顔色を変えずに言った。