アバター

「いいえ。中渕です」

「携帯のデータがそんなに簡単に消えますか?」

「中渕は、外から消されたと言ってましたが、そんな機能が有ると聞いたことは有りません」

「由香ちゃんの携帯電話には、犯人にとって不利な情報が入っていたのではないでしょうか?」

石井の頭の中で絡み合った糸が少しほどけだした。
中渕の行動が早送りしたビデオのように頭の中に流れる。

「まさか!」

中渕は、由香の携帯を自分で調査したがっていた。調査した結果、データは消去していた。それから、俺が狙われた。さらにサーバーの捜査は中渕の書いた手順書とおりに行われている。昨年の暮れにも、中渕はアバサイトのサーバーをくまなく捜査している。その時、自作のウイルスを入れることも簡単に出来たはずだ。ネットフォンにも警視庁からリモートで常時接続して捜査したこともある。警視庁のサーバーも中渕が管理者で中渕の許可がなければサーバー内を調査することはできない。スーパーコンピューターの中には総ての犯罪記録と警察官のデーターが入っている。SAT隊員にアバターのメールを送る事もたやすく出きる。
もし中渕が犯人なら、すべての糸がほどける。ただし、証拠は一切無い。