たまたま一人で下校していたとき、声をかけられた。
「これ、落としたよ?」
そっと差し出された手。
細いのにどこかたくましい指、白くて傷のついてない手の平。
女の子らしいけれど男の子を連想させる手だった。
差し出されたその手には私の愛用している、ウサギさんの絵がプリントしてあるハンカチがのっかっていた。
「あ、ありがとー」
お礼を言って男の子の顔を見たとき、はっとした。
私の中の時計が一瞬止まった。思わず息を飲んだ。
私の幼稚でちっぽけな脳みそでは説明なんかできない、それほど綺麗な男の子だったんだから。
緊張で奮える手を必死に動かして、男の子からウサギさんのハンカチを丁寧に受け取る。
土に落ちて汚れてしまったハンカチの泥を落として、再度ポケットの中にいれる。
「ぷっ………ックク……」
目の前から笑い声が静かに聞こえてきた。
なにがおかしいんだろうと男の子に視線を向けると、
「ウサギ柄、ねぇ………っぷ!その顔に似合わすぎ…!」
終いにはお腹を支えて爆笑してしまった。
