その声で呼ばないで




パニックになっている私に君は無邪気に笑う。





「知ってる。知ってるから。知ってるよ」





君は意味のわからない “知ってる” を3度繰り返した。


それから君は目をつぶって息を大きく吸い込んだ。

 
それにつられて私も息を吸い込む。


雨の臭いと湿った空気が肺いっぱいに入ってきて心地いい。






ねえ、どうして知ってるの?






私はそれを1番聞きたかったけど、問いかければ君はただ笑うだけで。





のりのついたスカートをギュッと掴む。



シワになっちゃうのに…







教えてくれないのならせめて名前だけでも教えてよ。




君は知っていて私はしらなんて理不尽じゃない。