汪魚の去った後の流澪の眼は、氷魚にいつかの兄を思い出させる。

「嫌……」
 拒絶の言葉も流澪の頭には届かない。氷魚を押し倒し、吸い付くようなその肌に唇を沿わせる。ただ貪る。
 右手はしっかりと握られ、振り切ることは難しい。
 ……そして氷魚は体の力を抜いた。

「ん……っ」
 歯を割り侵入する流澪の舌にも応える。術でも掛けられたかのような貪欲さで、流澪は氷魚を求める。月はまだ顔を出さない、故に体を繋ぐことは叶わないのに。

「……あ……」
 流澪の求めるのに、体をくねらす。流澪は氷魚の体に身を埋める。

 好機は到来した。