促され、清青は手の平の水を覗く。
「美しいと、思われませんか?」
 そこに映る、自分の容貌。狐色の髪、藤紫の瞳。
「いや、」
 清青は目を逸らした。
「天狗のモノとも、人のモノとも違う」
 手を少し開く。指の隙間から水は零れ、それを受け止めた氷魚の手に吸い込まれて行く。

「もし、」 

 すっかり水が無くなると、清青は氷魚の目を見て言った。

「もし、私の肌の色がもう少し暗く、髪と目が黒かったならば、私は自分を人だと信じた。もし、私の肌が赤く、鼻が長く、人を越えた力を巧みに使えたなら、私は自分を天狗だと疑うことなく信じた。しかし、私を見よ」

 烏帽子を取り、鬢を外す。
「鼻は短く、肌も髪も瞳も、どれも色が薄い。神通力は持たぬ、小賢しい技ばかり」

 再び、俯いた。
「…私は…何なのだ…」