燭台の明かりは部屋をゆるゆると照らす。
「何故、私の所へ」
 清青が尋ねる。
「匿って頂きたいのです」
 常盤緑の瞳が陰る。
「人魚は月に二度、満と朔の夜にだけ、ヒレが脚になります…子を宿すために。お願いいたします。どうか今宵だけ、今宵だけ匿って下さい…」

「今日は星がきれいだなぁ、太助」
「きれいだなぁ、ってなぁ…おい、弥平」
 二人は屋敷の見廻りをし、東対屋の紫青の部屋の前まで来た。
「お、今日は紫青様いらっしゃるのか」
「しっ、」
 手燭の火を吹き消し、格子の隙間から中を覗く。
「誰だ?あの女は…美しい」
「おぃ、太助…あの女、目が緑色だぞ」
「ほんとだ…」
「まさか物の怪の類じゃ」
「阿呆、それじゃ紫青様も物の怪ってことにな…こっちに気付いた」