新しく作った鳥の面を付け、瀧の裏へ。左手で錫杖と鞘を持ち、半ば刀を抜いた状態で進む。行くとさらに奥へと進む道がある。水路か。
「何故ここに……ここは豊備とは異なる山」
「水は全て繋がっております。故、私は水の豊富にあるところなら何処へも行けます」
「……確か“ヒメ”と」

 豊備で見た人魚が、岩の縁に腰掛けている。

「覚えていて下さいましたか」
「あぁ…」
 清青はふと、氷魚の頚回りに目をやる。白い肌に散りばめられた赤い痣。
 氷魚はその視線に気付き、静かに微笑む。水を掬い、痣にかけると僅かにそれは薄くなる。
「まだ消えませんか…」
「それを…消しに?」
「ええ」