山の廃寺、冥王寺――

「セイジョウ坊。おい、清青坊」

 狐色をした髪を後ろ一つに束ねて結い、一振りの太刀をざっと纏う。木の皮でできた鳥の面は丁寧に。面につけた紐を頭の後ろで結ぶ。身の丈ほどある錫杖を手に取る。破れた本堂から外に出る。

 高い木々の向こうから、ばさりばさりと羽音を立ててやってくる友を見上げる。
「悪い、シンザン。待たせた」
「いやいや。早く行こう、清青」
 深山坊は鳥の嘴のように尖った鼻の下、口元を緩ませて急かす。清青は仮面の下の目を、申し訳なく下げた。
「すまぬ、その前に父様に会って来ても良いか」
「おうおう。行ってこい。何せ、山には久しぶりに来たのだからな。俺はここで待っていよう」

 清青は、深山に感謝の意を伝えると、とん、と錫杖を突いた。高い杉の梢まで一度に跳び、軽く跳ねるように山を越える。