翼のない天狗

 月が傾く。風が木々の梢を鳴らしては過ぎていく。大きな風もないのに木の葉がしきりと揺れるのは、天狗の仔が遊んでいる故にと有青に教えたのは深山だったか清青だったか。
「氷魚殿」

 有青は、体の震えを懸命に抑えていた。どうしようもない喉の渇きが満たされようとしている。目の前の佳人が、惜しみなく、与えてくれるのだ。
「清青の話をもっと聴きたい」
 氷魚は深く頷いた。
 深山は楽しげに杯を重ねていく。