ずいぶん深いところにいる。肌を圧す水の力が強い。
「氷魚」
目を開けると、汪魚の顔があった。頬に埋め込まれた二つの細貝は、人魚の長の証。
「気付いたか」
「兄様……あの鯱は」
汪魚の腕の中にいる。頭がまだぼんやりしている。血の臭いを嗅ぎ過ぎて、鼻が効かない。
「氷魚の手柄だ。とどめはさした」
帰る肉体がなければ、魂の玉は砕ける。
「姉様は」
「お父上と共に、最後の鯱を止めている」
氷魚。
清青は呼ぶ。前よりも、自分の体が言うことをきかない。透明な函に入れられ、氷魚の記憶に閉じ込められたような感覚。
あの人はまた、泣いている。
思いが高まり過ぎているのか、呼びかけに答えはない。
氷魚。



