翼のない天狗

 あなたと話をしにきた、と清青は氷魚へ向き直った。氷魚の部屋の中である。そして、その奥にいる青年へ目をやった。

「そちらは、汪魚の仔か」
 水王は、その不思議な色をした瞳を見て、自らを落ち着かせるように深く息をした。

「ミナワと申します」
 くすりと笑い、氷魚は甥を引き合わせた。
「あのときの、たまごです」
 清青は氷魚と見た光景を思い浮かべた。氷湟が瞳の色を案じた卵である。

 
「そうか。ミナワ……水の泡、とな」
「水の王、です」
 正したのは、当人。
「されど、嗣がぬのであろう。汪魚の跡を」
 水王は不快に眉をひそめた。それはすなわち、肯定。

「母がないためです」
 氷魚は振り返り、甥の頬の傷跡を見た。細貝を除くとき、幼い水王は激しく泣いた。
「また、氷湟か」
「ええ」
「そなたの姉上は……」
「そうです、氷魚様」
 清青の言葉を、水王が遮った。