翼のない天狗

 侍女達は笑った。
「すぐには目は開きませんよ」
「それに氷湟様、緑の筈がございませんよ。汪魚様とのお子ですもの」

 氷湟も弱々しく笑った。
「そうよね……氷魚とは違うわ」

 氷魚の顔はまた、固まった。氷湟の笑みは明らかに、緑の瞳を軽蔑するものだった。


 また、闇。


「緑……瞳の色……」
 小さな灯りの下に、影がある。断続的な物音は、影――氷魚が書簡をあさる音。

「みど……」
 動きが止まった。
「瞳ノ色ハ黒キホド美ナリ。縁遠キ者ガ結べバ黒ク、縁近キ者ガ結べバ青ナリ。極ミハ緑、イトアサマシ。」

 ――人魚は数が少ない。それ故、今では漆黒の瞳の者はおりません。たいていが青みを帯びております。皆、その血を辿ればどこかで繋がっているのです。

 氷魚の声は淡々と言う。
「して、そなたの常盤緑は」

 ――私は、きょうだいか親子か……よほど血の近い者から生まれたということです。