清青は意識を現実へ引き戻した。ちょうど、夢から覚めようとする感覚に似ている。
文箱の蓋を閉めるように、体と意識、二つが合致する。
「お目覚めですか」
ゆっくりと瞼を上げると、氷魚が微笑んで見上げていた。深山の気配はない。
「ああ」
「もう夜明けです。どうぞ、川へお連れ下さいませんか」
「そうしよう」
「そこで、続きをお見せ致しましょう」
片膝を立て、立ち上がろうとした清青の目が止まった。
「そなた、わかって……」
「清青様、」
氷魚は眉を下げてわらう。
「私は妖しです。そして、あなたより百五十年も長く生きているのですよ」



