「参りました、母様」
姿は見えない。声だけが清青の体を取り囲む。
「氷魚」
「なんのお話ですか」
「氷湟から聴きましたよ、あなた、氷湟にひどいことを言ったそうですね」
「それは……姉様が……」
氷魚が口籠る。
「氷魚、」
呼びかけた声には、慈しむような笑みが含まれていた。
「どうして、怪魚に喰われるなんて言ったの」
「母様が話して下さった昔話に、あるでしょう? 冷たい流れに乗ってやって来た、黒い大きな魚の話。暴れるその怪魚に、掟に背いた咎人を差し出したら、怪魚は静まった、と」
「そうね」
「私は……姉様が大好きなのに、姉様は私に秘密を作って、それに……」
嗚咽。
「確かに、氷湟は掟に背きました。族長の娘ともあろう者が、皆に示しがつきません。でもね、氷魚」
「はい」
「あの子は既に罰を受けました。どんな罰かは聞かないで、だから氷魚、もう過去のことを咎めるのは止めましょう」
「はい」
話が漠然として掴みにくい。全てに納得した訳ではない。だが、母のあまりに悲しみの色が濃い声には頷くより他はない。そんな、「はい」だった。
姿は見えない。声だけが清青の体を取り囲む。
「氷魚」
「なんのお話ですか」
「氷湟から聴きましたよ、あなた、氷湟にひどいことを言ったそうですね」
「それは……姉様が……」
氷魚が口籠る。
「氷魚、」
呼びかけた声には、慈しむような笑みが含まれていた。
「どうして、怪魚に喰われるなんて言ったの」
「母様が話して下さった昔話に、あるでしょう? 冷たい流れに乗ってやって来た、黒い大きな魚の話。暴れるその怪魚に、掟に背いた咎人を差し出したら、怪魚は静まった、と」
「そうね」
「私は……姉様が大好きなのに、姉様は私に秘密を作って、それに……」
嗚咽。
「確かに、氷湟は掟に背きました。族長の娘ともあろう者が、皆に示しがつきません。でもね、氷魚」
「はい」
「あの子は既に罰を受けました。どんな罰かは聞かないで、だから氷魚、もう過去のことを咎めるのは止めましょう」
「はい」
話が漠然として掴みにくい。全てに納得した訳ではない。だが、母のあまりに悲しみの色が濃い声には頷くより他はない。そんな、「はい」だった。



