いつかの街道沿いの樹に二人は腰掛けた。

「知らぬ間に父親となっていた……」
「有青か」

 清青は頷く。おかしな事だ。
 ふと思い当たり、深山は尋ねた。

「お前、もう面はしないのか」
「面か……」

 あるにはあるさ。清青は懐から鴉面を取り出す。
「深山や、父様のような姿の者だけが天狗だと信じ込んでいたんだ。私は確かに奇警ではあるが、でも天狗だろう?」
「そうだな」
 長く生きるということは、考える時間を持つということだ。清青も深山もそれぞれの二十年を過ごして、長く深く考えた。清青は何なのか。