翼のない天狗


 水に濡れた漆黒の髪。
 小さな頭に細い首。
 青白い肌は光を帯びているようで、零れ落ちそうな二つの牡丹を覆うものは何もない。
 牡丹の下のくっきりとした括れ。
 その括れの下は、白金の鱗がびっしりと、まるで魚の様に……。

「……人魚」

 清青の呟いた言葉を聞き取ったのだろうか。そのものは、ゆっくりと頷いた。
 常盤緑の瞳と鮮やかな朱い唇が目につく。