翼のない天狗

「まだ、疑っているな。有青、」
「はい」

「有り得るのだよ。世界には己の知らないことが星の数ほど有り、それは全て事実だ。私は水の世界、そこで罪を犯し、二十年囚われていた」
「……紫青様」
 花の君が尋ねる。
「何だ」
「そこに人魚がいるのですか?」

「……そうだ」
「では二十年前、あなたが失踪したことと人魚は何か関係があるのですね」
「ああ」
「帝とも?」
「ああ」

 有青ははっとする。帝と関係がある。やはり、御所にいたのはこの人なのだろうか。
「その頃に出されたお触れとも?」
「ああ」
「人魚か、天狗を捕らえよ、というお触れですよ?」
 首肯。