「実原有青か」
「は」

 九重のどこかの御簾の前。有青は帝の御前にいる。
「皆、下がり」
 は、と躊躇いの色を浮かべながら、有青よりもずっと高位の者が捌けた。帝と有青の二人になる。

「面を上げよ」
 言われるままに有青は顔を上げる。御簾の向こうに帝の輪郭がある。どんな表情かは解らない。

「父親に良く似ておる」
 有青は視線を落とした。
「どうした」
 向こうからはこちらがよく見えるのだ。
「……私は、父親の顔、いえ、父親を知りません」