流澪は氷魚の部屋を背にする。

 彼女への思いは変わらない。好きだ。けれども、薄氷のように脆い今の氷魚に自分は何が出来ると言うのだ。或いは、あの時汪魚に密告しなければまだ望みはあったのかも知れない。ただ、時が過ぎるのを待つしかない。

 そう、もう時が経つのを待つしかないのだ。
 流澪は泳ぎだした。氷魚の部屋から、苦しそうに嗚咽が漏れていた。



 第二部 了