《時に氷魚殿》
息の整ってきた氷魚に、黒鳴は言う。
《清青を好いておるのか》
氷魚の顔が瞬時に耳まで染まる。そして穏やかに微笑んで、首を縦に振った。
《何故。あの容姿か》
「いいえ」
横に。
「私は、清青様が美しいから好いているのではありません」
「美しい?」
《何じゃ、深山。気付いておらんかったのか。奴の一番の力はあの端麗な容姿ぞ。では氷魚殿、なにが》
「清青様のこころ。あの方は、私です」
遠くを見つめるその常磐緑の瞳に、はっとさせられる。
《意味が汲めぬが》
「似ているのです、清青様と私は」
《と言うと》
「私も、清青様も、自分が誰なのか解らなくて、ずっと悩みながら生きてきました。けれども、私と清青様は知り合い、解り合い、その悩みを分かち合いました……」
《そうであったか……》
黒鳴は静かに息を吐いた。深山はすこし首を傾ける。



