「私に与えられた力です。右手を心の臓の上に当ててその魂を抜くことができるのです」
《天狗より恐ろしいな》
「そうだな、俺たちが出来るのは、急に風を起こすとか、人の目に止まらぬ速さで動くとか」
つと氷魚は顔をあげた。涙は消えている。
「それは、以前清青様がお屋敷の下男にしていたのを見ましたが」
《清青のは短い。まあそれが、半身が人間ということじゃ》
「では、白天狗とは? あの強い風は、清青様が起こしたのではなく、清青様を避けるために起こった風だ、と清青様が」
「俺も良くわからん、黒鳴、知っているのか」
《儂にも。清青は帝に慰み者にされたじゃろう、それが原因で憤り、力の収拾がつかなくなってしまったのではないか》
「なるほど」



