その先には、玲奈が声をかけていた美少年。


玲奈から話は聞いていた。


えっと、なんだっけ…


名前…


「玲奈の友達だよね?俺、向井海斗。カイトって呼んで。」

耳元で、初めて美少年の声を聞く。


私は、体が熱くなって、それを隠すように素っ気なく返事をした。


実は、あまり男の子と喋ることがない私。


男の子って、なんか苦手なんだよなぁ。


何話していいかわかんないし。

ごく普通の私なんかは、一人で歩いていても声なんかかけられることもない。


玲奈は美人でスタイルもよくて、よく男の人に声をかけられている。


私も一緒にいるのに、私は空気みたいな存在になる。


でも、それでよかった。


よかったのに。


初めて異性に声をかけられて、高鳴ってしまった自身の心に、スロットのボタンを押すスピードが増した。


それから、私が腰掛ける隣の椅子に美少年は座ってこちらを眺めていた。


横目からその姿が見えて、落ち着かない。


「な、なにっ!?


……かな?」


しまったとばかりに、強く言いすぎてしまったと、幼い子供に言うようにニコリと笑って付け足した。



「かわいい」


美少年は上から目線で私のことをそう言った。





何コイツ。

めっちゃ失礼。


玲奈のなんだか知らないけど。


腹立つ。


私は、黙って席を立ってゲームセンターを後にした。