色々な考えが頭をよぎる。でも悩んでいても仕方ない、と言い聞かせまた店内を物色する。


あっ、これかわいい。

ふと目を移した先には、淡いピンク色をしたポーチ。がま口になっているそれは人気商品らしく、棚の目立つところへ配置されていた。

よく見てみようと手を伸ばす。すると、もう一方から違う手が伸びてきた。


どうやらお互いに同じ商品を手に取ろうとしていたことに気付き、あっ、と同じタイミングで声をあげる。


「すみません。」

「いえ、こちらこそ。」

咄嗟に手を引きそう告げると、相手も同じような態勢だった。

無言で目が合う。そして再び、あっ、と声が揃った。


「……もしかして、この前の、」

ふわふわとパーマに、またしても真っ赤なダッフルコート。しかし今日のタイツは真っ黒なスタンダードなものだ。


「……楓ちゃん。」

伊東楓ちゃん。伊東のいとこだ。

あの真ん丸な瞳を更に丸くさせて私をみていたかと思うと、その目尻がスッと上がった気がした。

そして、鋭い声で言った。



「気安く呼ばないでもらえます?」