「伊東くんっ、ありがとうっ。」
気を付けてね、とその背中に向けて声をかけると、彼は一瞬振り返り小さく手を振って帰っていった。
残された私は、まだアパートの前に立ったまま、動けなくなっていた。
あることに気付いてしまったからだ。
あの時。彼に名前を呼ばれた時。
私は期待してしまった。
またあの日のように、もっと触れてほしいと、思ってしまったのだ。
その事実に気付いた時には、もう自分の気持ちはわかっていた。
この気持ちがなんというものなのかも。全て。
……私は、伊東くんが、好きだ。
「ふうん……。」
たどたどしく話す私を最後まで黙って見守ってくれた夕ちゃん。
お皿のオムライスはほとんど無くなっているのに対して、私はまだ半分ほどしか手をつけられていなかった。
「……なんかいいね。」
「え?」
最後にオムライスを一口食べてナフキンで口の端を拭うと、だってさぁ、と言葉を続ける。

