特別、というのが自分の中でどういう意味なのかわからなかった。
……わからないフリをしていただけなのかもしれない。
あぁ、もしかしたら。
午後十一時。相変わらず辺りは静かで、まるで伊東くんと私だけしかいないような、そんな気さえしてくる。
繋がれた手が離れた。
ついさっきまで暖かかった手が、冷たい空気に晒される。
「……い、伊東くん、」
震える声は、冬の街に消える。
彼が動いたのがわかった。大きな右手が私の頭に触れる。優しく撫でられると、また体が熱くなる気がした。
思わず俯く。
日和、とまた優しく呼ばれた。
ゆっくりと目線をあげると、また彼と視線が重なった。
ほんの数秒間、そのままだった。だけど、その時間はとてつもなく長く感じられて。
しかしその沈黙を破ったのは、彼だった。
「……じゃあ、俺行くわ。」
「えっ、……あっ、うん。」
口の端を少しだけ上げて、温かくして寝ろよ、と言うと、彼は背中を向けて歩き出す。

