でもこの年でお店を切り盛りするの十分すごいことだよなぁ、と考えているとメニュー表をすっと目の前に差し出された。
「何飲む?」
「あっ、えっと、伊東くんは……?」
そう問いかけると、俺は生、と返ってくる。伊東くんはビールか、なんというか想像通りだ。
散々悩んだ結果、あんず酒に決めた。
手袋を買った時にも彼は気付いているだろうけど、私は優柔不断だ。
小さなことに時間をかけて悩むことはイライラする人も多い中、彼はゆったりと待っていてくれる。
そこまで考えて、そういえば夕ちゃんもそうだな、と思った。
「悪い、クリニックからだ。」
彼がスマートフォンを手にし、そう言ったのはお酒を注文してすぐのことだった。
その言葉に私が頷いたのを確認すると、彼は足早にドアの向こうへと消えてしまった。
……なんだか、少し淋しいなぁ。
そんなことを思って、足をぶらぶらと遊ばせる。
とその時、目の前に綺麗なお酒が現れた。

