たどり着いた席は入ってきた扉から一番遠くの、少しだけ奥まったところにあるテーブル席だった。
座った一人掛けソファーは柔らかく、薄暗い店内には小さく音楽が流れている。
おしゃれなお店だね、と話しかけると、彼はメニュー表を手に取りながら答える。
「さっきの男いただろ。」
「うん、バンダナの?」
「ん、アイツは俺の幼なじみなんだよ。」
だからあんなに親しげに話していたんだ。とすると、この店は……
「ここは元々アイツの兄貴の店。」
「お兄さん?」
「そう、それで兄貴の店に就職、っていうか勝手に入りこんで、今は殆どアイツが仕切ってる。」
「お兄さんは? 」
「今度もう一店舗始めるみたいで、そっちが忙しいみたいだな。」
……なるほど。だからあのバンダナの人が出迎えてくれたわけだ。
伊東くんと同い年、ということは私とも同い年なわけだ。その年で自分のお店を持っているなんてすごいと思ったけど、そういう事情があったのか。

