あぁ、また彼の顔が不機嫌になった。

そりゃあ、そうだ。こんな地味な女に告白して、断られるなんて。きっと彼の人生にそんなことは無かったはずだ。


伊東くん、怒っちゃたかな。
もう仕事中ですら話をすることは出来なくなっちゃうのかな。

……それは、嫌だなぁ。













「……だったら、嫌でも考えさせてやる。」

その時だった。


そう呟いた彼は両手で私の顔を包むと、その綺麗な顔を私の方へと近付けてきた。

至近距離で見る彼の顔はこれでもかというくらい整っていて、その綺麗さとあまりの近さに私は魔法がかけられたように動けなくなってしまった。


彼は私の顔を見つめ小さくフッと笑うと、今度はそのまま顔を横に移動させた。


「俺は小山のことか好きだよ。」

私の左耳にぴったりと唇をつけてそう囁く彼の声はとても低くて、私の体の中に直接覚えさせるように響く。