つい苦笑いを浮かべそう言うと、彼も同じような顔をしている。
「もう遅いから。」
顎でアパートを指し促す。もう一度彼の方をちらっと見ると、何も言わずに私の頭を撫でた。
「ありがとう……気を付けて帰ってね。」
おやすみなさい、と付けたしドアを開けようと手をかけると、小山、と呼ばれた。
何だろう、と振り返る。すると彼はまた何も言わず、静かにキスを落としたのだった。
ドアをいきおいよく閉めると、その音が住宅街に響いた。
車を見送ろうとその場に立っていると、彼はアパートを指さした。中に入れ、ということらしい。
どうやら、私が玄関に入るまでいてくれるようだ。
ガラスの向こう側へ小さく手を降ると、同じようにそれを返してくれた。
歩くと、その度にカツカツと音がする鉄骨の階段をゆっくりと上る。
玄関の前にたどり着いた時アパートの前に目をやると、まだ車のエンジンをかけていなかった。

