初恋は雪に包まれて



私のアパートの前に着いたとき、もう時計の針は、揃って上を向こうとしていた。

彼はハザードランプを点けると、ギアをパーキングに入れる。そしてサイドブレーキを引いた。

シートベルトを外すと、また体勢を変えるように少しだけ腰を浮かせて座り直した。

……もうこんな時間だ。

飲み会がある日なんかは別として、普段から夜更かしをする習慣が無く、日を跨ぐ前には眠りに就くことが多い。

飲み会も、そう頻繁にあるわけではないので、こんな時間に外にいることは珍しいことだった。


普段なら、一刻も早く布団に包まれてしまいたい、と思える時間でもあった。

だけど、今日はそう思わない。

むしろこのままずっとこうしていられたらいいのに、とすら思っている。


車内は居心地がいい。きっとそのせいだ、と一瞬思ったが、そうではないことにすぐに気がついた。

空間じゃない。私はもっと、彼といたいのだ。


「……遅くまでごめんね。」

「いや、誘ったのは俺だろ。」

「ううん、……なんか別れづらいね。」