初恋は雪に包まれて



普通の会話でさえ、さらりと甘いことを言う彼を、私しか知らなければいいのに。

ガラスの向こう側を見ながら、そんな馬鹿なことを考えていた。



車は二車線の道路を滑るように走っている。

彼は運転が上手い。そもそも私自身、免許を取得してからほとんど運転をしていないペーパードライバーなので、人のことを言える立場ではないのだけれど、そう思う。

走り出すときは滑らかに加速していき、止まるときは少しの振動も感じないのだ。


左手を肘掛けにたてて顎を支え、右手で運転する姿は、"格好良い"という言葉がよく似合う。

首から顎にかけてのラインが綺麗だ。ステアリングを握る手は筋張っていて、男らしい。

この人と付き合うことになったのだ、と改めて思うと、また胸がドキドキと騒ぎだした。


無言でじっと見つめる私の視線に、彼が気付いた。


口が緩やかにカーブを作る。


すると彼はしっとりとした声で言った。


「あんまり見られると集中出来ない。」