「帰るか。」
「……うん。」
彼はまた私の頭を撫でると、体勢を直す。シートベルトをする彼を見て、自分もあわてて装着する。
車の中は相変わらず無言だ。
道路を走る車の数はさきほどよりも更に減っている。ほとんどすれ違うこともないくらいだ。
膝の上にかけてあるブランケットの上で、ペットボトルを両手を温めるように持っている。
これは車を出す前、彼がベンチの近くにあった自動販売機で買ってくれたものだった。
クリーム色のラベルに柔らかい字体で"ホットミルクティー"と書かれたそれは、私が以前彼に好きだと話したことのあるものだった。
彼が自動販売機へ向かうとき、私は何も言わなかった。だけど、以前の会話を思い出し、彼がこれを選んでくれたのだろうと思うとまた嬉しさが込み上げる。
両手を温めつつ、それをちびちびと飲む。ペットボトルに口をつけていると、彼がこちらを見た。
「旨いか?」
「うん、……ありがとう。覚えててくれたんだね。」
「お前のことだしな。」

