両手はやっぱり温かかった。
彼は頬を包んだまま親指で涙を拭う。
「小山。」
「……はい。」
「俺と付き合ってほしい。」
耳に届いた言葉は、偶然なのか、そうでないのかはわからないが、あの日と同じものだった。
そして、それを認識した瞬間、また新たに涙が頬を伝う。
「……はい。」
伝えたい思いはたくさんあるのに、それだけしか言えなかった。その一言でさえ、声が震えてしまったほどだ。
だけど彼にはしっかり届いたみたいだ。
また嬉しそうに笑う。
元々助手席に体を寄せていた彼が、さらにこちらへ近づいたのがわかった。両手はまだ頬を包んでいる。
薄暗い車内でも、はっきりと相手の顔が認識出来るほど顔が近い。
……心臓の音が聞こえてしまいそうだ。
涙は止まったが、泣いたせいで頭がぼうっとする。彼がゆらゆらと揺れるような不思議な感覚に陥る。
私はきっとこの時、とんでもなく間抜けな顔をしていただろう。

