もう、涙は止められなくなっていた。
……最初から止めようとはしていなかったけど。
鞄の中にハンカチが入っているはずだ。そう思ったけど、その行動を取る余裕がない。
沈黙した空間が、痛かった。
痛かった、という表現は間違っているかもしれない。だけど、それに近い感覚だ。
伊東くんは何も言わなかった。彼は驚いたような、茫然としたような顔でこちらを見ているだけだ。
少しの間、そんな時間が続いた。長く感じられたが、実際には一分も経っていない。
「小山、」
「っ、」
「小山、こっち向いて。」
優しい声で、そう言われた。
その言葉に、俯いていた顔をあげると、驚くほど優しい表情をした彼がいた。
「本当か?」
慎重に確認するように、そう問われる。それに何も言わずに頷いてみせると、彼は嬉しそうに笑った。
両方の頬に、手が添えられた。
そしてそのまま力が加えられ、強制的に上を向かせられる。

