あの時、彼に教えてもらった言葉の意味を私は知らなかった。
自分の彼に対する気持ちに気付いた時、私がとった行動はその言葉の意味を調べることだった。
昔ながらの、あの分厚い辞書は家に無かった。なので手元にあったスマートフォンで検索したのだ。
するとそこには、人情に厚いこと、と書いてあった。
人情とはなんだろう。
そう思った私は、その言葉も調べてみることにした。すると、スマートフォンの画面には、こう書いてあった。
"あたたかい心を持つ人"
「……伊東くんに、ぴったりだなって、思ったの。」
「……小山。」
「伊東くんはいつも優しくて、……伊東くんと話してるとね、心が温かくなる。」
小山、とまた名前を呼ばれた。
一度瞬きをすると、涙が一粒溢れてしまった。それを拭おうとはせず、私は続ける。
「もっと名前を呼んでほしいって思うの。」
「もっと触れてほしいって思うの。……伊東くん、私ね、」
私、伊東くんが、好きみたいです。
震えた声で言った言葉は、ちゃんと伝わっただろうか。

