ぽかんと口を開けて、彼の方を見る。すると彼は同じようにこちらを見ていた。
頭がぼうっとして、言葉が上手く出てこない。
「俺はちゃんと言ったよ。」
同じ言葉を二度続けた。
また彼が体勢を変える。体を起こしてこちらに向きを変えると、その大きな右手が伸びてきた。
久しぶりに、彼に触れられた。
外の空気とは真逆の、温かい手が私の頭に触れる。一度ゆっくりと髪を撫でると、冷めかけた頬の温度がまた一気に上がる。
そして、あの声で言った。
「俺は、小山が好きだ。」
いつか言われた言葉。その言葉は彼の声に包まれて、私の体の中にストンと落ちた。
「付き合ってほしいと伝えたけど、一度は断られている。」
「だけど俺の想いは変わらなかったし、変えようとも思わなかった。」
「楓の事は大事だけど、恋愛感情かと聞かれれば違う。俺がそういう意味で大切にしたいのは、小山だけだ。」
そのことを伝えてきたんだ、と。
あの低い声で、彼はそう言った。

