「あれから楓と話をしてきたんだ。」
数分経った頃だった。
彼は車に備え付けてある灰皿で煙草を消すと、そう切り出した。
「……お話できた?」
「ん、そうだな。」
彼が何かを考えていることがわかった。あの、親指で顎をなぞるような仕草をしていたからだ。
「アイツは俺の母親の妹の子どもでさ、もうガキの頃からの付き合いなんだ。」
「……うん。」
「俺は女兄弟がいなかったし、本当妹みたいに可愛がってたんだよ。」
でもそれが悪かったのかな、と彼は続けた。
自分は全く恋愛感情を持たずに、兄のように接してきた。だけど相手は違った。
一人の男として自分を想ってくれていたのだ。
驚いたことに、その事実に気付いたのはつい最近のことらしい。
「……気付かなかったんだね。」
「恥ずかしいことにな。」
正直なところ、楓ちゃんの姿は、誰がどう見ても伊藤くんに恋している女の子だった。
実際、ほとんど会話を交わすことの無かった夕ちゃんだってその事実に気付いたのだから。

