「……っ、そう。」
彼女は涙を拭くことなく、私たちに背中を向ける。そして何も言うことはなく、足早にさって行く。
見下ろす街灯が、一度だけ点滅した。
「……ごめんな。」
私の方へ体を向け直す。眉を下げ、困ったように彼は笑った。
「……伊東くん、」
「寒かったろ?」
「ううん、そんなことないよ。」
彼女が歩いて行った道を見る。彼女の背中は、目を凝らさずにもまだ確認出来た。
その小さな背中を見ながら、口を開く。
「……追いかけてあげて。」
彼がこちらを見る。そしてまた困ったように小さく笑う。
「……小山。」
送っていくつもりだったんだけど、と言ってくるる彼を、首を振り制する。
ここから家まではそんなに距離があるわけではないし、一人でも大丈夫だ。
それよりも今は彼女の方が心配なのだ。
……私の心配なんか、また余計なお世話だ、とあの瞳でまた言われてしまいそうだけど。

