先に口を開いたのは、彼女だった。
さっきまでしていた、可愛らしいトロンとした目とは真逆の、力強い目で伊東くんを見上げる。
「どうして?今から帰るんでしょ?」
「そうだけど、それが何。」
「私も淳ちゃんの家まで一緒に帰る。」
いいでしょ?、と彼に訴えるが、伊東くんはいつもの、あの無愛想とも言えるクールな態度をとる。
「俺の家来たってしょうがないだろ。」
「どうして!」
「お前はそれを渡しに来たんだろ。」
だったら俺の家まで来る必要はないだろ、と彼は続ける。
寒さから体を守るように腕を組む。そして、もう遅いから帰れ、と楓ちゃんを促した。
彼が言っていることはわかる。正しい。
……だけど、楓ちゃんは。
楓ちゃんはカレーを届けることなんて口実で、きっと伊東くんに会いに来たんだ。
こんなに寒くて、真っ暗な道を歩いて。
きっとそのことは伊東くんもわかっている。わかった上でそう言っているのだ。

