「……い、伊東くん。」
声が震えた。だけど、ちゃんと伝えなくては。
目の前には公園がある。ここは伊東くんと私の家のちょうど中間地点にあたる場所だ。
いつのまにか、こんなところまで歩いてきたのか、と少し驚く。
彼と過ごす時間はあっという間だ。
「あのね、」
「どうした。」
伝えたいことはたくさんあるけど、なかなか言葉になってはくれない。
たくさんの言葉がぐるぐるとかき混ざって口の中で消えていくような感覚に陥る。
「小山?」
「……あのね、私、」
冷たい空気を大きく吸い込んだ時だった。
「淳ちゃん!」
いつだったかと同じような、あの可愛らしい声が聞こえた。
赤いダッフルコートに、ふわふわの髪。
その人物はニコニコと笑いながら、少し足早にこちらへやってくる。
「……楓。」
「淳ちゃん!こんなところで何やってんの?」
……あぁ、なんてタイミングだろう。
こんなところで彼女に会うなんて。まるで待ち伏せしたいたようだ。
「何でいるんだよ。」
「何でって、お母さんがカレー作りすぎちゃったからって、お裾分けにきたの!」

