彼とバスケと私










《ビーーーー》



タイマーのその音を合図に、第一クォーターが終了する。




「お疲れ様です」




戻ってきた選手5人にマネージャーで飲み物とタオルを渡し、他の部員が団扇で仰ぐ。




「お前ら、いいぞ!この調子で頑張れよ」



そう笑う監督に、皆の顔が綻ぶ。



「美由は?どう思う?」



和也先輩に振られ、少し考えるけれど何も思い浮かばない。




「私も、いいとしか言えません。
注意していたことも徹底出来ているし、このままでお願いします。
私はそれしかありません」




微笑みながらそう伝えると、皆笑顔になってくれる。




「…なんか、美由が何も注意ないなんて珍しいな」




「え?」



澄斗先輩にそう言われ、思い返してみる。



「だって、今までだと1つは絶対注意があっただろ?
それが今回は褒めるだけって……俺らそんなけ今いいんだなって実感出来たな」





「確かに。言われてみればそうかもな。
注意と褒め言葉があるのがふつうだったからな」




「俺もちょっとえってなったし」






皆さん、どれほど私が厳しいと思ってるんですか。




私だって褒めるだけのときありますよ。





「私、何か無理やりにでも悪いところ探しましょうか?」



にっこり、嫌味を込めて言ってみる。




「「「「遠慮しときます。すみませんでした」」」」




「わかりました」




綺麗にそう返ってくるとは…。



いじめるのはやめてあげよう。