場所は変わりまして、カフェ、クレールエールに来ています。

街の中心からは少しだけ離れたところにあって、まさに穴場って感じのカフェだった。内装も綺麗で、緩やかに流れる音楽が心地良い。
とりあえずのオーダーをとって、琉夏を見る。何やら変な顔をしている。擬音をいれるなら、ムフフっていったところかな。


「夏乃夏乃、あそこ見て、あの席。萌える、マジ萌える。けしからんもっとやれ。」


琉夏の見ている方向を見ると、ちょっと遠くの席で男子二人がケーキを食べ合っている。これは琉夏がテンション上がるはずだ。何せ、こういうのを見るのが趣味な人ですから。


「琉夏、人前なんだから自重しよ、ね?」

「やだ!見るだけならいいじゃない。」


突然の駄々っ子が始まってしまった。それに、見るだけと言いながら、その手に持ってあちらの方に向けているスマホはなんだろうか。明らかに写真を撮るつもりだろう。
まぁ、いつものことなので、呆れながら見守ることにする。


「お待たせしました。キャラメルラテとカフェモカです。」

「あ、キャラメルラテ私です。カフェモカはそっちで。」


よく通る声の店員さんが持ってきてくれた。琉夏は気づいていないようなので、私が受け答えする。


「あれ、八柳さんと真柴さん?」


え?っと思い、顔をあげてみるとそこには星くんがいました。はい。
琉夏の情報って間違ってなかったんだなぁと軽く見当違いなことを考えながら、私はぼーっと星くんを見ていた。


「星くん?ここでバイトでもしてるの?」


私がまだ処理落ちしてる間に、琉夏は星くんに話しかける。しれっと言ってるけど、琉夏は彼がここでバイトしてること知ってたでしょうが。


「うん、そんな感じ。ここの店長と知り合いでね。」


優しい笑みを浮かべて返答をしてくれた。もうお腹いっぱいです、琉夏、ここに連れてきてくれて本当にありがとう。


「なるほど、そうなんだ。」

「あ、もし良かったら、バイトしてみない?今、人手足りてないんだ。」

『すみませーん』

「あ、ごめん、オーダー入った。またね。」


星くんはそう言って、足早に声が聞こえた方の席に言ってしまった。


「夏乃、いつまでフリーズしてるのさ。チャンスだよ、チャンス。こんな都合のいい話ないよ。ワーキングしよう、ワーキング!」

「ほ、本当に都合いいね…。うまく行き過ぎてる…。バイトに関しては飲食店のバイトやったことあるから、ある程度は大丈夫だけど…。」

「ならいいじゃん。やろうよ。私に癒しをくれ。」

「目的はそれか。」

「そうです。」


キリッっという効果音が聞こえるほどのいい顔をする琉夏。この子は雑食だから、自分が満足できる展開ならなんでもいいらしい。

ここまで都合がいいと裏に何があるんじゃないかとか思わないでもないけど、星くんと接点を作れる絶好の機会だ。やれるだけのことはやろう。

…あ、これ、フラグじゃないよ?たぶん。