【短編】いつも側に



支度が終わって玄関に向かうと、ドアはもう開けられていた。

靴に履き替えて外に出ると、門の前に自転車に乗った拓真。



「おら、後ろに乗れよ」

『ありがとっ!』


私は鞄を前のカゴに乗せて後ろに跨いで座った。



「行くぞー!!」

『踏ん張れー!!』


二ケツの自転車を拓真は勢いよく漕ぎ始めた。


この時間が私は好き…


こうして、二人だけの時間をゆっくり味わえるから…



『拓真ー、数学の宿題あとで見せて!』

「んじゃ、パン一個な!」

『はいはい』


数学は大の苦手…、こうしていつも見させて貰う代わりに交換条件を突きつけてくる。

まぁ、宿題を教えてもらえるならパンくらい安いもんだ。


それに、拓真と2人っきりになれるし…



「何、ニヤニヤしてんの?」

『べべべ、別にしてないよ!!』

「あー、そう」


やばい、顔に出しちゃ駄目だね。

一つ勉強になった気がした。