(すてき?)
 
みどりさんは、恍惚とした表情で、父を見つめていた。

そう、少女まんがなら、みどりさんの目はハート型になっているところだ。


みどりさんは、矢継ぎ早に質問した。

「ご主人、お名前は? お年は?」

逆に、今度は父があたふたしている。

「田中君、ご主人を撮って!」

訳がわからないままに、父は何枚も写真を撮られた。

何か言おうとすると、みどりさんが、熱い、熱い視線を父に送るのだ。

そんなみどりさんには、父もたじたじとなって、羊のようにおとなしく指示に従った。

歴史の教科書に「泣く子と地頭には勝てない」なんて言葉が載っていたけれど、あれはもう古い。

「泣く子と目をハート型にしたみどりさんには勝てない」だ、とあたしは笑いをこらえた。