だいぶ時間がたって、店に帰ろうとするあたしを見送る時に、春子さんは、ぼそりと、言った。

「年を取ると、失うものばかりと思っていたけれど、得るものも、あるのね」


さっき見た、祭壇の前のおばあさんの小さな丸い背中を思い出して、何も言えなくなった。

ただ、笑顔で、大きくうなずいた。