さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~

「若いうちはね、何かを手にしていく時代ですよね。仕事や家族や、いろいろなものを。

でも、年を取ると、そんなものを次々に失っていくんですよ」

おばあさんは、ポケットからハンカチを出して、額の汗をぬぐった。

真夏の午後1時。

商店街のアーケードを抜けてからは、炎天下、と言ってもいい陽射しの強さと、暑さだ。

父に車で送ってもらえばよかったと後悔した。

おばあさんが熱射病なんかになったら、大変だ。
どこか、日陰に入ったほうがいいかも……

おばあさんの汗がすごい。

早く日陰で休まなくては……

そんな心配をよそに、おばあさんは、また、陽射しの中を歩き始めた。